マウス胎児より背部皮膚を採取し、上皮組織と間葉組織に分離したのち、上皮系細胞と間葉系細胞を単離した。細胞非接着処理を施したPDMS製のスフェロイド培養器に上皮系細胞と間葉系細胞を1:1の割合で混合し、播種した。スフェロイド培養チップに播種した2種類の細胞は、3日間の培養中に、各well内で同種細胞どうしが凝集し、それらが融合した毛包の原基を構築した。この毛包原基中のほとんどの間葉系細胞はアルカリホスファターゼを発現しており、構築した組織体は、毛包誘導能を有することが示された。さらに、この原基をヌードマウス皮下に移植したところ、移植後18日で再生毛包原基がホスト皮膚内に生着して毛成長し、毛周期(毛髪成長、毛髪退行)を繰り返すことが観察された。移植18日目の皮膚を採取し、凍結切片を作製後、毛包再生に寄与する2種類の幹細胞(毛包上皮幹細胞及び毛乳頭細胞)特異的タンパク質に対する免疫染色を行ったところ、正常な毛包と同様に2種類の幹細胞の存在が観察され、組織学的に正常な毛包を形成していることが示された。以上の結果より、スフェロイド容器で大量に作製した毛包の原基は均一かつ安定に毛髪を再生させる能力を有することが示された。
図1 毛包原基の作製とマウスへの移植
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