細胞の大量調製を実現するために、スフェロイドの作製が可能な培養器を考案した。膵β細胞はスフェロイド形成により高い機能を発現することが知られており、また培養面積を現実的なサイズに低減できるためである。まず、微細加工機で直径500 μmのウェル構造を作製し、オレフィン樹脂とエポキシ樹脂を用いて、任意形状に設計可能なスフェロイド培養器の鋳型を作製した(図1)。次に、培養中の細胞に培養器底面からも酸素を供給するために、高い酸素透過性を有するシリコーンゴム(PDMS)を用いて、培養器本体を作製した。
作製した培養器に膵β細胞を播種し、3日間培養することで、直径約150 μmの膵β細胞スフェロイドを高密度に作製することができた。作製したスフェロイドをインスリン抗体で免疫染色した結果、インスリンを分泌している様子が観察された。また、底面からも酸素を供給することによって、膵β細胞の増殖とインスリン遺伝子の発現が促進されることも確認した。さらに、スフェロイドを4分間遠心し、中空糸膜内に充填するのみで、シリンドロイドを作製することができた(図2)。そして、中空糸とシリンジを接続し、注射の要領でシリンドロイドを回収した。
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図1 スフェロイド培養器の作製方法
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図2 膵βシリンドロイド
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